霞沢岳・八右衛門沢

 ヤマレコを見ていたら厳冬期バリエーションに霞沢岳スキー滑降の記録が載っていました。霞沢岳は上高地のすぐ近くにある山ですが、ルートの全てがバリエーションと云うか気が休まらない山です。

 

 以下、残雪期に登った回想です。山仲間から登るなら「八右衛門沢」が”ラク”と聞いていたので、ではそこを登ろうかと喋りながら歩いているうち取りつき点をうっかり通り過ぎていた。ここかな?と訝り気に登り始めたのは・・下山後に知ることになった「中千丈沢」でした・・すぐに勾配がきつくなる。前を行く人のアイゼンの爪が後者の顔の前に来る感じで、じきに岩峰の基部に到達(標高1800m付近)。装備は50mザイル1本のみ。”ラク”なルートとは聞いて来たが違い過ぎる。マズイところに取りついてしまった、、かなり登ってしまい戻るのもリスキー地図を広げ見える山々の方角から居場所を推測し退路を模索。西の方に向かえば傾斜は急だが尾根が下まで続いている。

 

 高度を下げながら山腹をトラバースしよう。小尾根を乗り越え隣の沢を降りていくと終点は滝でゴーゴーと音をたて激しく水が落ちてゆく。沢のあちこちでシュルンドが口を開けている。しかし隣の沢もその隣も同じでなかなか高度は下がらない。辛抱強く小尾根を上り下りするうちにようやく山腹の端に辿り着く。しかし急な尾根を下りてゆくと20mほどキレ落ちている。どうする?左手のきつそうな尾根を下ることも出来そうだが皆疲れている。

 

 ザイルを投げるとギリ地面に届いた。下は既に裏山の雰囲気でホツとしましたネ。エイト環もハーネスも無いので「肩がらみ」で懸垂下降。途中からちょっとした凹角になり脚が届かず空中でくるくる回ってしまう。でも気持ちはとても幸せ(思い返すと心のゆとり)でした。熊笹をかき分けると舗装道路を隔て中の湯が現れる。何ともあっけない心持に。・・大正池を散策し帰途へ。